緑内障と睡眠時無呼吸症候群
近年、眼科領域で注目されているテーマの一つに、緑内障と睡眠時無呼吸症候群(SAS)の深い関わりがあります。緑内障は日本における中途失明原因の第1位であり、自覚症状が乏しいため早期発見が極めて重要な病気です。
一方で、睡眠時無呼吸症候群は睡眠中に何度も呼吸が止まる病気ですが、これが進行すると全身の血管に負担をかけ、結果として目の神経にも悪影響を及ぼすことがわかってきました。前職の総合新川橋病院で、眼圧はきちんとコントロールされているにもかかわらず視野障害が進行してしまう患者さんに、睡眠時無呼吸症候群の検査をすすめたところ、診断されるケースが、少なからずありました。当院では、ただ目だけを診るのではなく、患者さんの全身状態や生活背景にも配慮した親身な対応を心がけています。もし、睡眠中のいびきや呼吸停止を指摘されたことがある方や、緑内障の不安がある方は、まずは当院へお気軽にご相談ください。
緑内障と睡眠時無呼吸症候群の密接な関係について
緑内障は、目から脳へ情報を伝える「視神経」という組織が障害され、視野(見える範囲)が少しずつ欠けていく病気です。一般的には「眼圧(目の硬さ)」が高いことが原因と考えられがちですが、実は日本人の緑内障患者さんの多くは眼圧が正常範囲内にある「正常眼圧緑内障」であることがわかっています。
ここで重要になるのが、血流や酸素供給の状態です。睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、眠っている間に呼吸が止まる、あるいは浅くなることで、血液中の酸素濃度が著しく低下する病気です。この酸素不足の状態が繰り返されると視神経に十分な栄養が行き渡らなくなり、緑内障の発症や進行を加速させる要因となると考えられています。
当院の患者さんの中にも、点眼薬など緑内障の治療を続けている一方で、夜間のいびきや日中の強い眠気を自覚されている方がいらっしゃいます。眼圧の管理だけでは視野の欠損を食い止められない場合、こうした全身疾患が隠れている可能性を考慮する必要があります。
緑内障の詳しい仕組みについては「緑内障の診断と治療」のページを参照してください。
緑内障の症状と進行の仕組み
緑内障の最も恐ろしい点は、末期になるまで自覚症状がほとんど現れないことです。人間には左右二つの目があるため、片方の目の視野が欠けていても、もう一方の目が補ってしまうのです。脳が無意識のうちに見えない部分を補完してしまうため、気づいた時には視野の半分以上が失われているケースも少なくありません。
主な症状の現れ方
- 視界の一部が霧がかかったようにぼんやりする。
- 階段の踏み外しや、人や物にぶつかることが増えた。
- 読書をしていて、文字が一部飛んで見える箇所がある。
- 夜間の車の運転が以前よりも怖く感じる。
これらの症状は、病気がかなり進行してから現れることが多いものです。特に、睡眠時無呼吸症候群を合併している場合、夜間の低酸素状態によって視神経へのダメージが蓄積しやすく、一般的な緑内障よりも視野障害の進行が早まるリスクが指摘されています。
もし少しでも見え方に違和感がある場合は、予約なしで受診可能な当院へお越しください。お忙しい方でも気軽に検査を受けていただける体制を整えています。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)が目に与える影響と原因
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に気道が塞がることで、10秒以上の呼吸停止(無呼吸)や呼吸が弱くなる状態が繰り返される疾患です。呼吸器内科や耳鼻咽喉科などで診断されることが多い病気です。Apple Watchの最近のモデルには睡眠時無呼吸の検出機能や高血圧の通知機能が追加されています。ウエアラブルデバイスの進歩で、まずは無呼吸に関心をもってもらうことは大切ですが、治療の必要性や重症度をしっかり判断するには 、入院して睡眠ポリグラフ検査を行うのがゴールドスタンダードです。
この病気がなぜ緑内障に影響するのか、その主な原因にはいくつかのメカニズムが考えられています。
視神経の虚血と酸化ストレス
呼吸が止まると血液中の酸素濃度が下がります。これにより、非常に繊細な組織である視神経が酸素不足(虚血)に陥ります。さらに、呼吸が再開した際に急激に酸素が供給されることで「酸化ストレス」が発生し、細胞がダメージを受けるというサイクルが繰り返されます。
自律神経の乱れと血圧の変動
無呼吸状態は体に強いストレスを与え、交感神経を過度に刺激します。これにより夜間の血圧が急激に変動し、目の血流を調節する力が低下してしまいます。眼圧は正常であっても、血流が不安定になることで視神経が弱ってしまうのです。
眼圧への直接的な影響
睡眠中の姿勢や、無呼吸に伴う胸腔内の圧力変化が、間接的に眼圧を上昇させる可能性も議論されています。特に、SASの治療によく用いられるCPAP(シーパップ)という経鼻的持続陽圧呼吸療法を使用している際も、空気の圧力が目に影響を与えないか慎重に見守る必要があります。
緑内障の病気の種類と分類
緑内障にはいくつかのタイプがあり、それぞれ原因や治療へのアプローチが異なります。睡眠時無呼吸症候群との関連が特に深いとされるものを含め、主な種類を解説します。
正常眼圧緑内障
眼圧が統計的な正常範囲(10-21mmHg)に収まっているにもかかわらず、視神経が障害されるタイプです。日本人の緑内障の約7割を占めると言われており、睡眠時無呼吸症候群や冷え性、低血圧などの「血流に関するリスク因子」を抱えている方に多く見られます。
開放隅角緑内障
目の液体(房水)の出口(隅角)が目詰まりを起こし、少しずつ眼圧が上がるタイプです。ゆっくりと進行するため、本人が気づかないうちに視野が狭くなっていきます。睡眠時無呼吸症候群による全身の血管への負荷が、この目詰まりを悪化させる可能性も考えられています。
閉塞隅角緑内障
房水の出口が塞がってしまい、急激に眼圧が上がる恐れがあるタイプです。急性の場合は激しい目の痛みや頭痛、吐き気を伴います。遠視の方や高齢の女性に多く見られますが、当院では迅速な診断により、必要に応じて総合新川橋病院などの専門施設へ速やかに連携する体制をとっています。白内障手術が隅角の閉塞を開放する根本治療となりますので、見え方に困っていなくても手術を勧める場合があります。
緑内障の治療法と当院のアプローチ
一度すり減った視神経を元に戻すことは、現在の医学では困難です。そのため、緑内障治療の目的は「これ以上進行させないこと」にあります。当院では、患者さん一人ひとりのライフスタイルに合わせた治療計画を提案しています。
点眼薬による加療
最も一般的で基本的な治療です。眼圧を下げるための目薬を毎日決まった時間にさしていただきます。現在は多くの種類の点眼薬があり、副作用の出にくさや効果の強さに応じて、ご自身が無理なく治療継続できるように処方を選択・調整いたします。
定期的な検査とモニタリング
視野検査や眼底検査、OCT(光干渉断層計)という目の断層写真を撮る検査を定期的に行います。これにより、視野の欠けが進行していないか、視神経の厚みに変化がないかを精密にチェックします。
全身疾患の管理と連携
睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合には、内科や睡眠専門の施設などと連携し、SAS自体の診断・治療(CPAP療法など)を推奨することがあります。全身の酸素状態が改善されることで、結果として視神経の保護につながることも期待できるからです。
生活習慣へのアドバイス
喫煙や過度な飲酒、睡眠不足は視神経の血流を悪化させる可能性があります。当院では「地域の目のかかりつけ医」として、日常生活で気をつけるべき点についても、親身にお話しさせていただきます。
緑内障と睡眠時無呼吸症候群についてのよくある質問
Q1. いびきがひどいと言われますが、必ず緑内障になるのですか?
A1. 全てのSAS患者さんが緑内障になるわけではありませんが、SASがない方に比べて数倍高い確率で緑内障を合併するという報告があります。一度眼科で視野検査などを受けることをお勧めします。
Q2. 寝る姿勢は緑内障に関係ありますか?
A2. うつ伏せ寝や横向き寝は、物理的に目を圧迫して眼圧を上げることがあります。また、SASの方は仰向けで無呼吸になりやすいため、適切な寝具や枕選びも大切と考えられています。
Q3. 緑内障の目薬で睡眠時無呼吸が悪化することはありますか?
A3. 一部の点眼薬(ベータ遮断薬など)は、喘息や心疾患がある方に慎重に使用する必要がありますが、通常、睡眠時無呼吸を直接悪化させることは稀です。ご不安な場合は、処方時に丁寧にご説明します。
Q4. 検査にはどのくらいの時間がかかりますか?
A4. 初診の場合は、視力検査や眼圧検査、眼底検査は必ず行います。視野検査が必要な場合は、希望されれば初診当日に行うことも可能です。混雑状況によりますが、なるべくお待たせしないよう対応いたします。
さいごに
当院では、お子様からご高齢の方まで、どんな目の不安にも親身に対応することを第一に考えています。緑内障という病気は、長く付き合っていかなければならない疾患です。だからこそ、患者さんが少しでも前向きに治療に取り組めるような環境づくりを大切にしています。
睡眠時無呼吸症候群との関わりについても、近年の医学的な知見を踏まえ、目だけでなく体全体の健康を考えた診療を心がけています。
「最近、なんとなく目が疲れやすい」といった、どんな些細なことでも構いません。予約制ではありませんので、鶴見市場駅からの帰り道や、お買い物のついでにいつでも気軽にお立ち寄りください。もし精密な手術が必要と判断した場合には、総合新川橋病院などの専門施設へ迅速に連携いたします。
スタッフ一同、温かい笑顔でお待ちしております。
受診をご検討の方は、まずは「初診の方へ」のページをご覧ください。
